アンコールはリビングで

Intermission 3 陽だまりの聖域

1. 決戦のあと

実家で父との決別を果たした、3月末の夜。

実家の重厚なドアを後にし、最寄り駅から電車に乗り込んだ俺は、ドアの横に寄りかかり、窓の外を流れる夜の街並みをぼんやりと見つめていた。

父との真っ向からの対峙。
決して理解し合えない平行線のまま、俺は自分の意志を叩きつけ、決別を選んだ。

俺を完璧なエリートに育て上げようとした父の思いは、あの薄暗いクローゼットにスーツと共にすべて置いてきた。

人生の大きな荷物を一つ下ろし、実家を出る時は軽く感じた足取りだったが、なぜか今、体は鉛のように重かった。
張り詰めていた緊張の糸が、少しずつ緩み始めている反動だろうか。

「……ふぅ」

窓ガラスに映る自分の顔は、ひどく疲労の色を濃くしていた。

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