アンコールはリビングで
2. 崩壊
重たいスチールのドアを開けると、トマトとニンニクをコトコトと煮込んだような、スープのいい匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。
同時に、リビングの奥からパタパタと小走りで近づいてくる、聞き慣れた愛おしい足音が聞こえた。
「あ、おかえり! 早かったね」
廊下の向こうから、少し心配そうな、けれどどこまでも温かく柔らかい笑顔を浮かべた凪が顔を出した。
エプロン姿の彼女を見た瞬間。
俺の頭の中で、ギリギリで保たれていた何かが、プツンと音を立てて切れた。
「……凪」
「えっ、わっ、ちょっと……湊!?」
俺は靴を脱ぐのももどかしく、玄関の土間に足を踏み入れたままの凪に、崩れ落ちるように倒れ込んで抱きついた。
彼女の小さな肩に、首筋に、自分の全体重を預ける。
ふわりと香る、いつもの柔軟剤と石鹸のいい匂い。
触れた肌の柔らかい感触。
そして、芯から冷え切っていた俺の体を溶かしていくような、高い体温。
重たいスチールのドアを開けると、トマトとニンニクをコトコトと煮込んだような、スープのいい匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。
同時に、リビングの奥からパタパタと小走りで近づいてくる、聞き慣れた愛おしい足音が聞こえた。
「あ、おかえり! 早かったね」
廊下の向こうから、少し心配そうな、けれどどこまでも温かく柔らかい笑顔を浮かべた凪が顔を出した。
エプロン姿の彼女を見た瞬間。
俺の頭の中で、ギリギリで保たれていた何かが、プツンと音を立てて切れた。
「……凪」
「えっ、わっ、ちょっと……湊!?」
俺は靴を脱ぐのももどかしく、玄関の土間に足を踏み入れたままの凪に、崩れ落ちるように倒れ込んで抱きついた。
彼女の小さな肩に、首筋に、自分の全体重を預ける。
ふわりと香る、いつもの柔軟剤と石鹸のいい匂い。
触れた肌の柔らかい感触。
そして、芯から冷え切っていた俺の体を溶かしていくような、高い体温。