アンコールはリビングで

36 リビングのアンコール

1. 根っこの理由

「今回のアルバム、『Sanctuary』ってつけた理由。さっきテレビで少し話したけど……俺の根っこの部分の理由、ちゃんと話したことなかったよな」

「えっ……?」

少しだけ首を傾げて聞き返した私の顔を、すぐ隣に座る湊が、熱を帯びた琥珀色の瞳で真っ直ぐに見つめていた。

湊のデビュー4周年が迫る、過酷な全国ツアーの開幕と新曲のリリースを数日後に控えた、夜のリビング。

ローテーブルを挟んだソファの上で、私と湊は肩が触れ合うほどの距離で並んで座っている。

テレビの電源はとうに消え、部屋の中には時計の秒針の音と、私たち2人の微かな呼吸音だけが落ちていた。

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