アンコールはリビングで
「あれ、俺から凪への、世界で一番盛大な匂わせだから」

「〜〜〜っ!!」

カッと、顔から火が出るかと思うくらいに全身が熱くなった。

そんな、あんなに美しくて壮大な曲の中に、私の名前を隠していただなんて。

「な、なんでそんなこと……っ! バレたらどうするの!?」

「バレねぇよ。意味合いとしては『嵐が静まる』って意味で完璧に文脈通ってるからな。……でも、俺が歌うたびに、絶対に凪の顔が浮かぶようにしたかった」

湊の顔がゆっくりと近づき、唇が触れるか触れないかの距離で、甘く囁く。

「……固く結んだ両手を、そっと開いたなら。何もいらない、もう何も欲しくない。……ただ、ここにある『今』だけでいい」

それは、『Sanctuary』のCメロの後半の歌詞。

世間に対する執着も、親への反発も、重たい鎧もすべて手放して。
ただこのリビングに帰ってくれば、それでいいのだという、彼からの不器用で、ひどく純粋な愛の告白だった。

ドッドッドッ、と。自分の心臓の音がうるさいくらいに鳴り響いている。

彼の深く澄んだ琥珀色の瞳に吸い込まれそうで、私は何も言えずに、ただ小さく頷くことしかできなかった。

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