アンコールはリビングで
3. リビングのアンコール

張り詰めた甘い空気が、私たちを包み込む。
湊の唇が私の唇に重なろうとした、その瞬間。

「……っ、待てよ」

湊が不意に動きを止め、ふっと立ち上がった。

「え……?」

さっきまで私をすっぽりと包み込んでいた彼の大きな体温が離れ、夜のひんやりとした空気が肌に触れる。ほんの少しだけ、寂しさが胸を掠めた。

「ちょっと待ってろ」

湊はリビングの隅へと歩いていき、ギタースタンドに立てかけてあった愛用のアコースティックギターを手に取った。

そして再びソファへと戻ってくると、浅く腰掛けた。

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