アンコールはリビングで
呆れと、おかしさと、そして胸の奥から込み上げてくる温かい感情。

私はソファに深く背中を預け、テレビの中で静かに微笑む弟の顔を見つめた。

あの子が、あんなに優しく、穏やかな顔で笑うようになるなんて。

『お母さんが亡くなってから、父さんの厳しさは全部、まだ未来が決まってないあんたに向かっちゃってた』

4年前の春。
私がラウンジで湊に言った言葉を思い出す。

厳格な父の期待という名の重圧に縛られ、息もできずに深い水底に沈んでいたような、あの頃の湊。

私たち兄姉は、自分のことで精一杯で、あの子に「息継ぎの場所」を作ってやれなかったことを、ずっと後悔していた。
でも、今は違う。

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