アンコールはリビングで
「……っ」

画面に映し出された映像に、私は思わず息を呑んだ。

1番のメロディでは、仄暗い光の中でスタンドマイクの前に立ち、アコースティックギターを弾きながら歌う湊の姿。

あの4月に撮影されたジャケット写真……限界ギリギリの38度の熱を隠して挑んだ一枚と同じ、熱を帯びて潤んだ強い瞳、少し乱れた前髪、浅い呼吸。

着飾った姿を脱ぎ捨てる『Melt』の世界観に、その『剥き出しの命の熱』を感じさせる無防備な姿が、痛いほどリンクしている。

そして、2番に入った瞬間。
画面の中の湊がギターを後ろに置き、ゆっくりとステージへ歩き出した。

激しいダンスではない。
重ためのベースラインに合わせて、首筋から指先までしなやかに波打つようなボディウェーブと、肩の力が抜けたお洒落で色気たっぷりのステップ。

マイクスタンドを指先でなぞるような仕草に、私は心臓が激しく跳ね上がるのを感じた。

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