アンコールはリビングで
(……っ!!!)

彼が、ちょうど少し邪魔になった前髪を、左手でガサッとかき上げるところだった。

これは、無意識。
運転中のただの自然な動作。

なのに、露わになる広い額、長い指、そしてシャツの開いた襟元から覗く首筋のライン……。

そのすべてが信じられないくらい雄々しくて、私の心臓をドカンと打ち抜く。

私は慌てて視線を前に戻し、真っ赤になった顔を隠すように窓枠に肘をついた。

「……くくっ」

隣で、湊が低く笑う声が聞こえた。
完全に味を占めている、余裕とSっ気が混ざった笑い声だ。

悔しい。
悔しいけれど、どうしようもなく惹かれてしまう。

付き合いたての初デートみたいに、手が震えるほど緊張している自分がいた。

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