アンコールはリビングで
5. 視覚の遮断と、溶け合う温度

車は海沿いのルートを外れ、少し高台にある公園の駐車場へと滑り込んだ。

夜景を一望できるその場所には、他に車の一台もなく、深い静寂が支配している。

シフトレバーをパーキングに入れ、エンジンを切る。
エアコンの音が消え、車内にふっと、夜風の気配と静けさだけが訪れた。

「……湊? どうしてここに……」

私が不思議に思って振り返った、その瞬間だった。
カチャリ、と自分のシートベルトを外した湊が、長い腕を伸ばして私のベルトのボタンを押した。

「……こっち向いて」

「えっ、あ……」

彼の手が私の後頭部に添えられ、広いセンターコンソールの上へと、優しく、けれど強引に私の上体を引き寄せる。
息がかかるほどの距離。

薄暗い車内でもはっきりとわかる、彼の深く熱い瞳が、至近距離から私を真っ直ぐに射抜く。

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