アンコールはリビングで
「……今日、島崎さんに頼み込んで車まで借りて、やっと外で2人きりになれたのに。……全然こっち見てくれねぇから、どうやったら俺のほう向くか、ずっとそればっか考えてた」

彼が私の髪に指を絡め、耳たぶを親指で優しく撫でる。

その体温と、彼から漂うウッディーアンバーの香りが、私の中の「好き」という感情のストッパーを完全に外してしまった。

「……だって……今日、湊がかっこよすぎるんだもん……」

私は彼のシャツの胸元をキュッと握りしめ、潤んだ瞳で彼を見つめた。

「……ツアーに向けて切った髪型も、やっぱり刺さりすぎてるし。そのシャツも……全部ズルい。密室でこんなに近いのに、直視したら、私、どうにかなっちゃいそうで……怖かったの……」

逃げ場のない車内での、正直な告白。
それを聞いた瞬間、湊の瞳孔が微かに開き、耳の先がパッと赤く染まるのがわかった。

「……っ!!」

「……だから、見れないの。……湊が、悪いんだよ」

私が少し拗ねたようにそう言うと、彼は「……っ、クソ……」と低く呻き、私の顎をグッと持ち上げた。

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