アンコールはリビングで
3. 画面越しの熱狂

翌日、土曜日の朝。
昨夜遅くまで残業したせいで、目覚めたのはすっかり陽が高くなった頃だった。

一人で遅めのブランチを食べる。
普段なら、食事中にテレビをつけることはあまりないのだけれど、今日ばかりは部屋の静けさが寂しくて、それを紛らわすためになんとなくテレビのリモコンを手に取った。

画面には、週末の音楽情報番組のヒットチャート特集が映し出されていた。

『――今週の第1位は、リリースからわずか数日でぶっちぎりのトップに躍り出ました! 早瀬湊さんの新曲、『Melt』です!』

テレビのスピーカーから、あの日リビングで私にだけ歌ってくれた、あの艶やかなギターのカッティングと彼の歌声が流れてくる。

画面には、色気たっぷりに歌い上げるMVの映像が流れ、ワイプの中のタレントたちが「今回の早瀬くん、本当に色気がヤバいですね!」「大人の魅力が爆発してますよ!」と口々に絶賛していた。

「……湊、すごいな……」

テレビの前で、私はぽつりと呟いた。

あの曲が世の中に放たれ、こんなにもたくさんの人たちに愛され、熱狂を生んでいる。
彼がどれだけ凄いアーティストなのかを、改めて突きつけられたような気がした。

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