アンコールはリビングで
時刻は午前8時。
昨夜のライブの熱狂と疲労で、きっと彼はまだホテルのベッドで深い眠りに落ちているのだろう。
メッセージに「既読」の文字はつかない。

いつもの休日の朝なら、私が起き上がろうとすると「……んー、もうちょっと寝よ……」と背後から長い腕が伸びてきて、ベッドの中に引きずり込まれるのがお決まりのパターンだ。

2人でぬくぬくと毛布にくるまりながら、他愛のない話をして、少しだけ甘いキスを交わす。

そんな甘ったるい朝の時間が、今日は無い。

(……あー、もう。寂しがってる場合じゃないよ)

私は両手でパチンと自分の頬を叩き、気合を入れた。

今日、私には絶対に完遂しなければならない『重要ミッション』があるのだ。

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