アンコールはリビングで
「…………」

ナイフとフォークを手に取るが、一口運んで、俺はすぐにそれを止めた。

美味い。
間違いなく美味い。

だけど、今の俺が求めている味じゃない。

(……凪の作るメシが食いてぇ……)

今朝、リビングで食べた、あの優しい出汁の匂い。
もち麦ご飯のぷちぷちした食感。
塩麹で柔らかくなった鶏肉の味。
俺の体調を考えて、凪が手間暇かけて作ってくれた、あの「いつもの和食」。

あれこそが俺のガソリンだったんだと、この空っぽの腹が、そして心が悲鳴を上げている。

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