アンコールはリビングで
「あ……うん。久しぶりに一人で出掛けててね。緑に囲まれたオープンテラスが人気のオーガニックフレンチのお店に行ったの。珍しくテラス席で食べちゃった」

「……楽しそうでよかったわ。テラス席、な……」

湊が少しだけ、困ったような、寂しそうな顔をして眉を下げた。

「……わりぃな。俺の顔がさされねぇとこならな、テラスでもなんでも、一緒にメシ食えるんだけど……」

「ううん、いいの。気にしないで! 私は私で、たまにこうやって一人で行くのが、特別感があって好きなんだよ?」

フォローを入れる私の言葉に、湊は顎に手を当てて、何かを深く考え込んでいるようだった。

「……誰も俺のこと知らねぇ場所。……海外とかか」

ぽつりと独り言のようにこぼした後、湊は顎から手を離し、ふと顔を上げて私を真っ直ぐに見つめた。

「……凪と二人でさ。誰も俺たちの邪魔をしない場所に行って」

彼からの突然の言葉に、私は思わず瞬きをする。
琥珀色の瞳は真剣そのもので、熱を帯びた優しい光が私を真っ直ぐに射抜いていた。

「ゆっくり綺麗な海とか見に行くのもいいかもな」

彼が優しく微笑みながら呟いたその言葉は、どこか遠い未来を見据えているようで。

いつか、二人で。

このツアーが終わり、もっともっと先の景色を一緒に見られる日が来ることを、私は静かに祈った。

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