アンコールはリビングで
(……いつも凪は、こうやって俺のために食事の準備してくれてんだよな)

仕事で疲れて帰ってきても、俺の健康を第一に考えて、色々と工夫しながらキッチンに立ってくれている。

その背中を思い出すだけで、どうしようもなく愛おしさが込み上げてくる。
スポンジで泡を立てながら、俺は小さく自嘲気味に笑った。

「……凪がいねぇのに、ずっと凪のことばっか考えてる俺……マジで重症だわ」

ポツリと呟いた言葉が、キッチンの水音に吸い込まれていく。
でも、そんなことは今に始まったことじゃない。

凪と出会って、あの非常階段で初めて心を交わした時から、俺の頭の中はずっと凪のことでいっぱいだったのだから。

(……早く、顔が見てぇな。あの優しい笑顔で『美味しい!』って喜ぶ顔が見たい)

早く帰ってこい。
早く、俺の名前を呼んでくれ。

そんな想いを募らせながら、俺はシンクの掃除を終え、エプロンを外した。

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