アンコールはリビングで
「……んー、朝からめっちゃいい匂いすんだけど」

寝室から出てきた湊が、目を擦りながらリビングに姿を現した。

「おはよう、湊」

「おう。……あー、今日、本当はずっと凪といてぇんだけどな……」

ダイニングの椅子にドサッと腰を下ろし、彼は不満そうにぶつぶつと文句を言う。
そんな彼に、私は料理の手を止めずに笑いかけた。

「何言ってるの。今日は湊の『デビュー4周年記念日』でもあるんだから! 日本中のファンが、今日の湊を待ってるんだよ?」

そう、今日は彼の30歳の誕生日であると同時に、アーティスト・早瀬湊のデビュー4周年記念日でもある。

私の言葉に、湊は「わかってるよ」と少し照れくさそうに頭を掻いた。

「今日は昼から、4周年の記念特番ラジオの生放送だろ。そのあとは音楽雑誌のインタビューと撮影……で、夕方からは今週末の大阪公演に向けて、バンドメンバーとの修正リハーサルだ。……マジで分刻みだわ」

「ふふ、大スターだもんね。頑張ってね」

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