アンコールはリビングで
2. 完璧な仕事と、いちファンの顔

(……今夜は、最高の誕生日にするんだから)

朝、彼からもらった甘い体温を今日のエネルギーに変えて、私はオフィスへと足を踏み入れた。

自席につき、PCを立ち上げると同時に、私は彼への想いを一旦心の奥にしまい、素早く仕事モードへと切り替えた。

「水沢さん、例の商業施設のリニューアル案件だけど」

お昼前、デスクにやってきた課長が、手元の資料を見ながら話しかけてきた。

月曜日の夕方、課長から依頼された案件だ。
本来の期限は今朝だったけれど、私は昨日の夕方のうちに提出を済ませていた。

「期日よりも早く提出してくれたのに、データも内容も完璧だね。何より導線の細かいところまで目を配って修正提案まで入れてくれてて……。本当に助かったよ」

あの日、定時で上がるために少し強引に振り切ってしまった負い目はあったが、結果的に期日前に完璧な状態で提出できたことで、課長からはむしろ厚い信頼の眼差しを向けられていた。

「いえ、とんでもないです。無事に形になってよかったです」

私は爽やかな笑顔で応えながら、内心で小さくガッツポーズをした。

彼が外で「神様」として完璧なステージを創り上げているように、私だって、自分の仕事はプロとして完璧にこなしたい。

それに、今日の定時ダッシュを心置きなくキメるためにも、一切の隙を残すわけにはいかなかった。

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