アンコールはリビングで
3. フレンチビストロの特等席

仕事も無事に片付き、定時まであと少しという時間。
デスクの横に置いていたスマホが、短く震えた。

『ラジオと取材終わった。これから大阪に向けての修正リハ。先週の福岡で気になった音のバランス、完璧に仕上げて早めに帰る』

湊からの、短くも頼もしいメッセージ。

私は『お疲れ様! リハ頑張ってね。先に帰って待ってるね』と返信を送り、スマホをバッグにしまった。

月曜日から今日まで、なんと三日連続での定時上がり。
仕事は完璧に終わらせているのに、なぜか申し訳なく感じてしまうサラリーマンの性に、私は小さく苦笑しながらオフィスを後にした。

帰宅途中、私はある場所に立ち寄り、数日前から予約していた『あるもの』を受け取った。
それを慎重に持ち帰り、誰のいない静かなリビングへと戻る。

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