アンコールはリビングで
リビングに戻ってきた湊は、テーブルの上に並べられた本格的なメニューを見て、息を呑んだまま立ち尽くした。

「……っ、マジか。これ、本当に凪が一人で……?」

私は湊の椅子を引きながら、少しだけ胸を張って微笑んだ。

「もちろん。今朝から仕込んでおいたんだよ。今日は湊が主役なんだから、これくらい当然でしょ?」

湊は恐縮したように、でも隠しきれない喜びを瞳に湛えて席に着く。
目の前の一皿一皿を食い入るように見つめている。

「この前のホワイトデーの時も驚いたけど、今日のは一段と気合入ってんな……。凪、本当に店出せんじゃねぇの? 俺、毎日通うわ」

「ふふっ、湊専用の隠れ家ビストロだね。……はい、まずはお誕生日おめでとうの乾杯しよ?」

私が冷えたシャンパングラスを差し出すと、湊は少しだけ真剣な目をして私を見つめ、それから優しくグラスを合わせた。

「ああ。凪も仕事終わりで疲れてんのに……いつもありがとな。……乾杯」

透明な泡が弾ける音と共に、私たちの特別なディナーが始まった。

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