アンコールはリビングで
「うまっ……! この、新しいプチプチしたやつ?(キヌア)がいい仕事してんな」

「あ、気づいた? ミネラルも豊富なんだよ」

湊はメニューを口に運ぶたびに感動し、何度も私に視線を送った。

食卓では、今日の仕事の様子や、現場で花束をたくさん貰ってくすぐったかったという話に花が咲く。

「……でさ、夕方のリハなんだけど。福岡の公演で、ベースの低音がドラムのキックと被って、少しだけ抜けが悪く感じてた箇所があったんだよ」

言葉を切った湊の目が、プロのミュージシャンの鋭さを帯びる。

「そこを今日、アンプのセッティングとEQ(イコライザー)の調整で完璧に直せたから、大阪はもっとヤバい音になるぞ」

自信を覗かせる彼の言葉に、私は一口ピラフを口に運んでから、隠しきれない『音楽オタク』の顔を少しだけ覗かせた。

「ベースとキックの分離感って難しいもんね。EQで整理したなら、それぞれのアタックの輪郭がくっきりして、もっと気持ちいいグルーヴが出るんだろうな」

頭の中でドームの音響を想像して、私は思わず弾んだ声を出す。

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