アンコールはリビングで
(よし……!)

そっと箱から取り出したのは、都内の超一流パティスリーで前から予約しておいた、四号サイズのホールケーキ。

雪のように滑らかな純白の生クリームと、艶やかな真っ赤な苺だけが美しく並べられた、究極にシンプルで洗練された極上のショートケーキだ。

仕事の行く先々で、メディア向けの派手で巨大なケーキを嫌というほど貰い(そして食べさせられ)ている彼に、家でまで重たいものを食べさせたくなかった。

小ぶりだけれど、甘さ控えめで口の中でシュワッと溶けるこのケーキなら、ディナーの後でも絶対に美味しく食べられるはず。

私は音を立てないように、細いキャンドルを数本挿し、マッチでそっと火を灯した。

ゆらゆらと揺れる小さな炎が、ケーキの上のホワイトチョコのプレートを優しく照らす。

準備は完了。
私は壁のスイッチに手を伸ばし、リビングのメイン照明をパチンと落とした。

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