アンコールはリビングで
「……えっ?」

突然暗くなった部屋に、ソファから湊の慌てたような声が聞こえる。

「凪、大丈夫か?停電……?」

私は返事をせず、キャンドルに照らされたケーキを両手で慎重に持ちながら、キッチンの奥からゆっくりとリビングへと歩み出た。

暗闇の中、浮かび上がる小さな炎の光。
それに気づいた湊が、ハッと息を呑む気配がした。

「……湊」

ソファの前のローテーブルまで進み、私は彼が座っているちょうど目の前の床に、ぺたんと膝をついて座った。

ガラスのテーブルの上に、そっとケーキを置く。

キャンドルのオレンジ色の光が、驚きで見開かれた湊の琥珀色の瞳と、少しだけ照れくさい私の顔を柔らかく照らし出していた。

< 789 / 796 >

この作品をシェア

pagetop