アンコールはリビングで
「三十歳のお誕生日、おめでとう。それから……デビュー四周年も、本当におめでとう。湊の作る音楽が、私は世界で一番大好きだよ」

少しだけはにかみながらそう伝えると、湊は言葉を失ったように、ただじっと私とケーキを交互に見つめていた。

「……っ、凪……これ、わざわざ用意しててくれたのか……」

「今年はちゃんとお祝いしたくてね。さっき腹八分目にしておいたのは、これを美味しく食べてもらうためでした」

湊は目元を片手で覆い、照れ隠しのように深く息を吐いた。
けれど、隠しきれない喜びと、私への愛おしさが、その仕草の端々から痛いほど伝わってくる。

「……俺、今日仕事先で一生分のケーキ見てきた気分だったけど。……今、凪が目の前に持ってきてくれたこれが、間違いなく世界で一番美味そうに見えるわ」

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