アンコールはリビングで
湊が優しい顔で、炎に照らされたケーキを覗き込む。

そして、そこに添えられた一枚の小さなチョコプレートを見て、不思議そうに首を傾げた。

「ん? このプレート……『Happy Birthday』、だけにしたんだな」

「あ、それなんだけどね……」

私は少しだけ身を縮め、苦笑いしながら白状した。

「お店で予約する時、『6月10日』で『30歳』で『Minato』なんて書いたら、ケーキ屋さんにバレちゃうかもしれないでしょ?」

私は恥ずかしさから視線を彷徨わせ、テーブルの縁を指先でそっとなぞった。

「もし『四周年』なんて足した日には、もう言い逃れできないし……。だから、大騒ぎになったら大変だなって思って、名前は我慢したの」

私が照れくさそうに笑いながらそう言うと、湊は一瞬きょとんとした後。

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