アンコールはリビングで
昨日の福岡初日の夜。
俺はツアー初日を終えて疲弊しきった早瀬くんのために、少しでもスタミナをつけてもらおうと、このホテルで一番高級なステーキのルームサービスを手配した。

だが、数時間後に部屋へ確認に行くと、その最高級の肉は半分以上残されていた。

『……すみません、島崎さん。せっかく手配していただいたのに』

ソファに深く沈み込みながら、早瀬くんは少しだけ申し訳なさそうに、けれど隠しきれない寂しさを滲ませて苦笑した。

『……凪の飯が恋しすぎて、これ以上はちょっと、喉を通りそうにないです』

日本中を熱狂させるスターが、ホテルの最高級ステーキよりも、彼女が作った健康的なご飯が食べたいと嘆いている。
そんな光景を思い出し、俺は小さく息を吐いた。

「……もし、あのファンたちがこの事実を知ったら、一体どんな顔をするだろうな……」

俺は誰に聞かせるでもなく独り言をこぼし、スマホの画面を落とした。

明日、彼を無事に東京の『聖域』へ送り届ける。

それが、マネージャーとしての俺の最も重要なミッションになる。

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