アンコールはリビングで

Liner Notes 3 守護者の視線と、連鎖する熱狂の裏側

1. 境界線の朝、不器用なトップスターの素顔

六月十日、水曜日。早朝。

俺、島崎は、いつものように都内の高級マンションのエントランス前に送迎車を停め、彼が降りてくるのを待っていた。

今日は、早瀬湊にとって三十歳の誕生日であり、デビュー四周年という二重の記念日だ。

やがて自動ドアが開き、キャップを深く被った彼が姿を現した。
車に乗り込んできた瞬間、俺はルームミラー越しに声をかける。

「おはよう、早瀬くん。……そして、三十歳の誕生日、本当におめでとう。デビュー四周年もね。凪さんの次に祝えるのはマネージャーの特権かな」

俺がそう言うと、彼はシートに深く身体を預けながら、少しだけ照れくさそうに、けれど穏やかな微笑みを浮かべた。

「……おはようございます、島崎さん。ありがとうございます。……三十歳、ですね。なんだか、まだあまり実感が湧かないですけど」

「はは、そうだろうね。……三十歳の抱負は、もう決まってる?」

俺の問いに、彼は窓の外を流れる朝の景色を眺めながら、少しの間を置いてから答えた。

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