アンコールはリビングで
俺と最愛の妻である華(はな)は、学生時代からの長い付き合いだ。

ある日、早瀬くんの恋人として紹介された彼女の名前を聞いて、華が「えっ!? もしかしてサウンスの時の凪ちゃん!?」と劇的な声を上げたのだ。

華は大学時代、『SOUNDSCAPE(サウンドスケープ)』
——通称・サウンスという、他大学合同の音楽系インカレサークルに所属していた。

そのサークルに、二つ下の後輩として籍を置いていたのが、他ならぬ凪さんだったのだ。

「ほら、私サウンスに入ってたじゃない? 凪ちゃん、新歓の時こそ『音楽仲間が欲しいんです!』って目を輝かせてたのに、その後全然来なくなっちゃってね」

華の言葉通り、当時の凪さんは、建築デザインの過酷な課題とバイト、そして何より大好きな『ライブ参戦』に明け暮れていたらしい。

「結局、一人でライブに行く方が性に合っている」と悟った彼女は、サークルには滅多に顔を出さない、いわゆる『幽霊部員』だったそうだ。

ただ、うちの華とはコアな音楽の趣味がドンピシャで合ったそうで、サークルには来ないのに、たまに二人でニッチなライブのチケットを融通し合ったり、CDを貸し借りしたりするような、不思議で仲の良い先輩後輩だったという。

そんな過去もあり、華と凪さんが「ええーっ!? あの時の!」と劇的な再会を果たしてすっかり意気投合してしまったのは、俺にとっても嬉しい誤算だった。

華が「凪ちゃん、凪ちゃん」と妹のように可愛がる手前、俺だけが「水沢さん」と他人行儀に呼ぶのも不自然になり、いつしか俺にとっても彼女は「担当タレントの彼女」を超えた、「妻の可愛い後輩」として『凪さん』と呼ぶ関係になっていたのだ。

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