アンコールはリビングで

46 研ぎ澄まされた熱と、ミューズの準備

1. 研ぎ澄まされた熱と、もち麦ご飯

六月二十二日、月曜日。

宮城での二日間の公演を終え、湊が東京のリビングに帰ってきた。

「……ただいま」

玄関のドアが開き、リビングに姿を現した彼を見て、私は思わず包丁を動かす手を止めた。

彼から漂ってくる空気が、いつもと明らかに違っていたからだ。

普段なら、地方公演から帰ってきた直後は「あー、疲れた……」と分かりやすく肩を落とし、私の肩に重たい頭を乗せてくることが多いのに。

今日の彼は、背筋が真っ直ぐに伸び、琥珀色の瞳にはギラギラとした熱と、極限まで研ぎ澄まされたオーラのような鋭い光が宿っていた。

疲労を見せるどころか、むしろ全身から危険なほどのアドレナリンを放ち続けている。

「おかえり、湊。……なんだか、すごく目が冴えてるね?」

私が驚きながらそう言うと、彼はキャップを脱ぎながら、ふっと口角を上げた。

「ああ。ライブの熱がまだ抜けてねぇっていうか……いや、違うな。もう俺の頭の中は、今週末の東京ドームで完全に埋まってる。今の俺、過去最高に声も体もキレてる気がするわ」

自信に満ち溢れた、圧倒的なトップスターの顔。

今週末のツアーファイナルに向けて、彼は完全に「ゾーン」に入っているのだ。

その近寄りがたいほどのカリスマ性に、私は一瞬だけ圧倒されそうになった。

けれど。

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