アンコールはリビングで
湊が、ギターのネックを握る右手を、凛とした動作でスッと頭上に掲げる。

たったそれだけの、優雅で静かなサイン。

それだけで、さっきまで地鳴りのようだった五万人の歓声が、まるで魔法にかけられたように一瞬で波を引き、水を打ったような完全な静寂へと変貌した。

ドームを埋め尽くすファンたちは皆、本能で察したのだ。

これから始まる神聖な音楽の幕開けを、一音たりとも聴き逃してはならないと。

張り詰めた心地よい静寂の中、湊の長い指先がアコースティックギターの弦を静かに弾いた。

繊細で、けれどドームの隅々にまで確実に染み渡るような、美しく透き通ったアルペジオの調べ。

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