アンコールはリビングで
上目遣いで湊の顔を見つめ返し、そっと腕に力を込めてすがりつくと、彼はたまらないというように深く息を吸い込み、私の唇を塞いだ。

いつもなら、すぐに主導権を奪うような彼が。

今夜は、まるで壊れ物を扱うように、とてもゆっくりと、丁寧に私の唇を味わっていく。

角度を変え、何度も啄み、存在を確かめるようにそっと舌を絡ませる。

唾液の混ざり合う微かな水音だけが、静かな寝室に響いた。

「……ん、……はぁっ……みなと……」

「すげぇいい匂い……あったけぇ……」

お互いのルームウェアが、もどかしい手つきでゆっくりと脱がされていく。

ベッドの下へと滑り落ちた衣類の代わりに、彼のはだけた素肌の熱が、私の身体を隙間なく覆い尽くした。

疲労で重たいはずの彼の身体が、今はどうしようもなく心地よい。

彼の唇が、私の額から鼻先、臨戦態勢を解いていくように何度も落ちてくる。

気の遠くなるほど優しくて甘い、慈しむような口づけ。

< 907 / 910 >

この作品をシェア

pagetop