アンコールはリビングで
2. 戦友の幸せオーラと、隠れ家イタリアン

さて。
彼には彼の休みがあるように、私には私の会社での現実(日常)がある。

いつもなら、自席で手作りの『腸活&タンパク質重視弁当』――もち麦ご飯に、発酵食品の副菜、ゆで卵などを詰めたもの――を広げながら、読みかけの小説を開いたり、スマホでSNSを開いて「早瀬湊のツアーファイナル」の余韻に浸るファンたちの熱狂的な投稿をこっそり眺めたりして過ごすのが、私の平和なお昼休みのルーティンだ。

けれど、今日は違う。

私は通勤バッグからお財布とスマホだけを取り出し、軽やかな足取りでオフィスを出た。

向かった先は、エレベーターホール。

そこで待ち合わせをしているのは、同期の藤木理紗(ふじきりさ)だ。

私と同じ三十一歳。

入社以来、激務に耐えかねて会社を去っていく同期が多い中、いまだに第一線で現場ディレクターとして泥水をすすりながら(本人談)戦い続けている、私にとって一番の戦友である。

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