アンコールはリビングで
「あの、春頃に付き合い始めたとか言ってた、彼……だよね?」

そう。
今年の三月頃、理紗が「実は彼氏ができた」とこっそり教えてくれたことがあった。

でも、その時の彼女は「ま、まあ、長続きするか分からないし……」とかなんとか照れ隠しのように言葉を濁していて、私は彼の名前が「リョウさん」だということと、少しの惚気話しか聞いていなかったのだ。

当時ももっと色々と聞きたいことはあったけれど、私自身が数年付き合って同棲までしている彼氏――国民的スターの早瀬湊――のことを、十年来の仲の理紗にさえ、そのすべてを伝えることができず秘密にしている手前、あまり深く追及できずにいたのだった。

「そう……前に話してた、涼……くん」

理紗はコクリと頷いたけれど、その表情は幸せでいっぱいというより、嬉しいけれどなんだか困ったような、複雑な顔をしているように見えた。

「私の記憶が正しければ……三月くらいに付き合い始めて、えっ、すごいね! たった三ヶ月でプロポーズ!? 理紗が即OKするんだもん、『この人しかいない!』ってくるものがあったって事だよね?」

私は突然の友人の祝い事に驚きつつも、なんだか自分のことのように嬉しくて、テーブルから身を乗り出してしまった。

仕事の愚痴を言い合い、現場の泥水を一緒にすすってきた戦友が、そんな運命的な相手に出会えたことが心から嬉しい。

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