アンコールはリビングで
2. 益子からの箱

手を洗ってリビングに戻ってきた私が段ボールの送り状を見ると、そこには『栃木県芳賀郡益子町』という文字が印字されていた。

「ああっ!」

私は思わず声を上げた。

「思い出したか? 昼前に、宅配便で届いた」

湊がハサミを手渡してくれながら、楽しそうに笑う。

今年の四月末。島崎さんが無理やり湊を休ませてくれて、見事な藤棚を見るために二人で出かけた一泊二日の小旅行。

その翌朝、栃木県の益子に足を延ばし、二人で初めての陶芸体験――ろくろ回しに挑戦したのだ。

『焼き上がって乾燥させるのに時間がかかるから、二ヶ月後に発送しますね』

工房の職人さんが言っていた言葉が、ふいに蘇る。

< 954 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop