アンコールはリビングで
「なあ。風呂、一緒に入るか」

「……これ片付けてから行くね」

「じゃ、早く来いよ」

名残惜しそうに腕をほどいて、湊は鼻歌混じりにバスルームへと消えていった。

水音の聞こえなくなったキッチンで、私は洗い終わった二つの器を布巾で丁寧に拭き上げた。

濃い藍色のどんぶりと、アイボリーの小鉢。迷いのない大きな器と、縁が少しだけ波打った小さな器。

並べても、ちっとも揃ってなんかいない。

けれど、不器用な私たちが同じ日に隣り合って作った、世界でたった一つの器だ。

私はキッチンの食器棚の扉を開けると、一番手前の、いつでもすぐに手が届く特等席に、二つの器を仲良く並べて置いた。

(……待ってるよ、湊)

私は心の中で静かに呟いて、食器棚の扉をそっと閉めた。

ガラスの向こうで、藍色とアイボリーが、静かに並んでいた。私たちより、ひと足先に。
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