獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢
 彼は感情を見せぬ余裕ある態度で勝ち進み、一位になった時にだけ、右手を振り上げて周囲からの拍手に応じていた。

 あ……笑った。

 私もそこまで長く居るわけではないけれど、ヴィルフリートはあまり笑わない。性格上仕方ないのかもしれない。だからこそ、こうして特別感のある笑顔なのかもしれない。

 確かにヴィルフリートは、誰もが認めるほどに格好良いかもしれない。

 ……けれど、ただそれだけだと思う。

 これから、また何か嫌な思いをするくらいなら、恋なんてしない。恋人も夫も要らない。一人で生きていきたい。

 何かを振り切るように首を横に振った私は盛り上がっている面々から離れて、ジョニーの居る庭園へと向かった。

 フロレンティーナのような女性は珍しいとは私だって頭では理解していても、彼女に植え付けられた恐怖心は離れてからもいつまでも消えていかない。

 フレデリックは私の言葉なんて信じてくれなかったし、これからもそれは変わらないと思う。

 彼はフロレンティーナの望む通りに振る舞い、元婚約者のことなんて、すぐに忘れてしまっているだろう。

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