「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
私は何もしていないのに、まるで極悪人のような言われようだ。親とは我が子を殺せと無慈悲に言えるものなのだろうか?実際に目の前で言っている人間がいるのだから、そういう人間もいるのだろう。このように人を、しかも自分の娘を殺せと言える人間の方が、悪魔や魔王のようだと思うのだが……。
何もしていないのに、私は魔王だと殺される運命にある。
どうして自分が……。
体に『魔王の斑紋』があるだけだというのに、何故こんな扱いを受けなければいけないのか。
何だかやるせない気持ちになってくる。
唇をかみしめながら両親からの罵倒に耐えていると、オリエが泣きじゃくりながら私を指さした。
「お姉さまが私を殺そうとした……うわーーん」
オリエは何を言っているのだろうか?オリエが私を殺そうとしたのでは?そう言おうとしたが、お父様とお母様がそれを聞いて、怒りで顔を赤くさせた。
「貴様!私の可愛いオリエになんということを!さっさと処分してくれる。馬車の準備は出来ているのだ。明日、この家から追い出してやる」
「こんな危険な子供、もう視界にも入れたくないわ。行きましょうオリエ」
お母様はオリエを大事そうに抱きしめると立ち上がった。
きっと父と母を見るのはこれが最後だろう。
「お父様……お母様……」
縋る思いで二人に声をかけたが、こちらを見た両親の顔には嫌悪感がみてとれた。
どうしてこんなにも私は嫌われているのだろう。
ポロリと瞳から温かい何かが落ち、それが冷たい石の床を濡らした。
「魔王も涙を流すのね」
母の言葉で、自分が泣いていることに気づく。
「これが涙……」
床に落ちていく透明な雫を見ている間に、私の家族は私の視界から消えていた。
私の命はあと僅かだと言うのに、両親に別れの挨拶をすることさえも許されなかった。
始めて流す涙がぽろぽろと頬を伝い落ちていった。