「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 更にジワリと目の奥が熱くなり、周囲がゆらゆらと揺らめくと、涙が一筋落ちる。それを皮切りに涙が零れ落ちていく。

 私は何度もジュウド様に謝罪した。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……」

「まさか……ジェシカ……君は……魔王なのか?」

「……っ……」

 喉が詰まって私は答えられなかった。

 私が魔王だと答えたらジュウド様はなんて言うのだろう。

 私は何も言えずにぽろぽろと涙を流す……それは肯定であると、自分が魔王であると認めたようなものだった。

 何も言わない私を見ながら、ジュウド様が左腕の包帯を取って見せてきた。

 その腕には花のような太陽の痣が……。

 うそ……まさかこれって……。

 私は震えながら、ジュウド様の腕に触れた。

「これは……勇者の聖痕……」

 ジュウド様に視線を向けると、ジュウド様が悲しそうな表情を浮かべていた。

 そうか……そうなんだ……。

 ジュウド様は勇者様だったんだ。

 ジュウド様は私の命を絶つための存在。

 私は命を奪われる存在。

 私はジュウド様の手によって命を絶たれる。

 ジュウド様に殺されるなら、それが良いのかもしれない。

 知らない人間によって殺されるより、ジュウド様の手によって殺される方がいい。

 だって、最後に見つめるのが……最後の時に視線の先にいる人がジュウド様になるのだから。

 好きな人を見つめながら死ねるのなら、それがいいのかもしれない。

 運命とはなんて残酷なのだろう。

 瞳の奥で作られた涙が、とどまることなく零れ落ちていく。



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