「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
以前に見た聖教会の人間とは真逆の黒い服を着て、首から十字架をかけている。しかし前回と違うのは、黒の布地に金の刺繍を豪華に入れた初老の男性がいることだった。この初老の男の目は落ちくぼみ、眉間に黒子がある。その人相は悪く、いかにも悪者といった容姿だった。
「ゴルドウ様、私たちはもう何日もこの森で洞窟を探していますが見つからないのです。本当にこの森に洞窟があるのですか?」
その言葉に、ゴルドウと呼ばれた金刺繍の初老の男は疑問を訪ねてきた男を睨みつけるように目を細めた。
「私が嘘を言っているとでも?」
「いえ、そうではありませんが、これだけ探しても見つからないのはどうなのかと……。聖教会の人間も探していますが、あちらも見つけられない様子ですし。洞窟の秘密とは何なのですか?」
「知りたいですか?」
ゴルドウは真顔のまま訪ねてきた男を見た。すると男の喉仏がごくりと上下した。
「し、知りたいです。何も知らずに探すのは、やる気が出ませんし」
男の言葉を聞き、ゴルドウは深く息を吐き出した。
「それもそうですね」
ゴルドウは近くにあった木の幹に腰を下ろしながら語り出した。
「あの洞窟には石碑が置かれているのですよ」
「石碑ですか?」
「石碑には魔王の秘密が刻まれているそうです。魔王の生まれる秘密です」
「それが分かれば、魔王様が誕生するということですか?」
「そうですね。しかしそれとは逆に、聖女の秘密も刻まれているのです」
「……聖女の秘密ですか?それは私達にはどうでもよい気がするのですが」
「そうですね。聖女はどうでも良いのですが、魔王は聖女であり、聖女もまた魔王なのですよ」
「それはどういう意味なのですか?」
「そのままの意味です。心の美しいままに成長すれば聖女へ、心が荒めば魔王様となられるのです」
くくくっと笑うゴルドウは本当に楽しそうだ。