「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 *

 私は隣で眠るジュウド様を起こさないように静かに起き上がった。それから台所に行って食事の用意をする。お鍋に水を入れ、お湯を沸かすと簡単なスープを作った。それからフライパンを温めて油をなじませ、そこにベーコンと卵を割り入れる。フランパンが奏でるジュージューという音と、ベーコンの美味しそうな匂いにつられてジュウド様が起きて来た。

「ジェシカおはよう。良い匂いだね」

 そう言いながらジュウド様が後ろからそっと抱きしめてきた。私の肩にジュウド様が顔を寄せると、首筋に何度もキスを落としてくる。

「もう、ジュウド様。くすぐったいですよ」

 やめてほしいと言うように言うが、実のところ嬉しくて仕方がないし、やめてほしくない。

 ジュウド様がこうして甘えてくれることが嬉しいのだ。

 しかしこのままではご飯が食べられない。

 肩に乗るジュウド様の頭を優しくなでながら、私はクルリと振り返り、ジュウド様の唇に人差し指を当てた。

「もう、めっ!ですよ」

 まるで子供を叱るようにそう言うと、ジュウド様が目を丸くしてから右手で口元を覆った。

「可愛すぎる」

 ジュウド様がそう呟いた。

 それを聞いた私はジュウド様に抱きつきながら「ジュウド様も格好いいです」そう言って笑うと、ジュウド様の唇が近づいてきた。甘いキスの予感に胸が高鳴る。ジュウド様の唇が私の唇に触れる。チュッというリップ音が鳴るたびに幸せの波がやって来る。

 こんなに幸せなのに……。

 この幸せが長く続かないことはない。

 死への足音がすぐそこまで近づいていた。

 怖い……。

 胸の奥がギュッと締め付けられる感じがした。

 それは言い様の無い不安だった。



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