「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「これは食事をしながら気軽にする話ではないだろう」
きょとんとしていると、はーっとジュウド様が大きく溜息をついた。
「すみません。食事の後に話した方が良かったですよね」
「そうじゃない。そういうことではないんだよ」
呆れたようにそう言われ、何だか悲しくなった。
ジュウド様にめんどくさい人間だと思われているのだろうか?
嫌われてしまったのだろうか?
じわりと瞳に涙が溜まり、自然と謝罪の言葉が出てしまう。
「ごめんなさい」
嫌われたくない。
何かジュウド様に嫌われない為の言葉を……そう思っていても、何も言葉が浮かんでこない。
嫌われたくないのに……。
表現の乏しい自分に嫌気がさし、悲しみから俯いた。
そんな私を見たジュウド様は椅子から立ち上がると、私を包み込む様に抱きしめてくれた。
「違うんだ、ジェシカ。君を悲しませたいわけではないんだ。もっと自分のことを考えてくれ。自分を大切にしてほしい。俺がいなくなって、ジェシカがジェシカでなくなったら俺は悲しい。君が魔王になるのなんて……想像するだけで悲しくなるんだ」
「ジュウド様は私が魔王になるのは嫌?」
「ああ、そうだ」
「今のままがいい?」
「そうだ」
「ジュウド様は死なない?」
「ああ、そうだ」
「ずっと一緒にいてくれる?」
「そうだ」
「ジュウド様……私が好き?」
「そうだ……」
最後の質問はいらなかったかもしれないが、私はジュウド様の気持ちが聞けて嬉しかった。
私がにっこりと笑うと、ずっと『そうだ』と答えていたジュウド様が、私の最後の質問に笑った。
話している内容は世界が滅びるという重たい話のはずなのに、なぜか幸せな気持ちになった。ジュウド様がそばにいてくれるなら私は魔王にはならない。