「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 涙目で蹴り上げてきた傭兵に視線を向けると、この傭兵も先ほどの傭兵と同様に私を虫でも見るような目で見ていた。その瞳は仄暗く恐ろしいと感じた。傭兵は魔王である私を痛めてつけてもいい対象と思っているようではあるが、怒りや憎しみを込めて私を蹴り上げているわけではないようだった。ただ物を蹴るように、私の体に蹴りを入れ続ける。何度も蹴り上げ続けて疲れたのか、私を蹴るのを止めた騎兵は私の髪を無雑作に掴んだ。そして私を引きずりながら歩いていく。

「痛い、痛い」

 私が痛いと泣いて叫んでも、傭兵の男は立ち止まろうとはしない。そして、ぼろぼろの馬車の前までやってくると、私を馬車の中に放り込んだ。

「行け」

 そう言うと御者が「へい」と返事をして馬車を走らせた。痛む体を何とか動かし、馬車の外に視線を向けるも傭兵の男達以外誰もいなかった。家族はやはり来ていない。昨日のあれが最後だったようだ。

 昨日流した涙というものが頬を伝ってまた落ちていく。

 私もオリエのように愛されたかった。

 お父様とお母様に抱きしめてもらいたかった。

 死なないでほしい。愛していると言ってもらいたかった。

 「愛している」一言でよかった。

 ただそれだけでいい。

 そう言ってもらえたら救われたのに……。




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