「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「魔聖教会とは何ですか?そんな組織は聞いたことがない。その薬も本物なのですか?疑わしいものですね。本物だというのならあなたの心臓を突き刺してみて下さい。私がその薬をあなたに使ってさしあげますから」
これは何の茶番だ。
俺は聖教会の人間を見てはっとした。
こいつは魔聖教会のゴルドウだ。
間違いない。
ジェシカが言っていた人相そのものだ。初老で目が落ちくぼみ、眉間に黒子がある。なぜ聖教会の制服を着ているのだろうか?
まさか……。
ジュウドは恐ろしい想像をして、理解し、確信した。
聖教会の中に魔聖教会の人間が紛れ込んでいる……。
聖教会の中にいったい何人の魔聖教会の人間が潜り込んでいるんだろうか?
しかもこの場にいるということは聖教会でも幹部だということだ。
そしてこいつは今、俺にこの薬の効能を確かめろと言っている。俺が心臓を一突きしたとして、こいつが俺にこの薬を使うだろうか?
使ったふりをして俺を殺すのではないか?
俺が死んだらどうなる?
それを知ったジェシカはどうする?
絶望に心を染めたジェシカは……魔王になる。
それを望んでいるのは魔聖教会の人間たちだけ。
このままでは魔聖教会が思い描いたシナリオのように話が進んでしまう。これでは魔聖教会の思うつぼだ。
ゴルドウを睨みつけるように見つめながら俺は奥歯を噛みしめた。
そんな俺に向かって陛下がその濁った瞳を俺に向けた。
「ジュウドよ。その薬が本物だと証明は出来ないのだな?」
「…………」
「答えられぬということは肯定ととるぞ」
俺は両手を握り締め、陛下の前で頭を下げた。