「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「陛下、信じて下さい。魔王は存在しません。この国にいるのは聖女です。聖女はこの国に繁栄をもたらす存在です。殺してはなりません」
俺は陛下にいかに聖女の存在がこの国に必要なのかを話した。
そんな俺の横にやって来たゴルドウが俺と同じように陛下に向かって頭を下げた。
「陛下、勇者は魔王に騙され懸想しているようです」
「何だと!ジュウド貴様、魔王にたぶらかされたか。勇者ともあろう者が何たることか」
嘆かわしいと言いたげに、陛下がわざとらしく額に手を当てた。
陛下はどうしてもジェシカをこの世から消したいらしい。
「陛下、聞いてください。彼女は本物の聖女です」
「それを証明して見せよと言っている」
陛下がこれ以上は話すことは無いと言った様子で手を前に出した。
「勇者ジュウド・オーグランに命ずる。魔王の斑紋を持つ者の命を絶ち、我が前に連れてこい。我に忠誠を示せ!」
陛下の声が響き、キーンッという耳鳴りと共に、世界から音が消えた。
命令……。
俺は今、何を言われた?
ジェシカの命を絶てと?
この命令を俺は聞くのか?
聞かなければいけないのか?
俺は周りを見渡し、息を呑んだ。
ここにいる全ての重鎮達の瞳がこちらを向いている。
魔王の命を絶て、ここに亡骸を持ってこい。
これは陛下の命令だぞ。
さっさと行け。
何も言わずにこちらを見ているが、重鎮達の瞳がそう言っているように見えた。
無理だ……。
出来ない。