「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「ジュウド……様?」
「ああ、ジェシカ……俺のジェシカ。髪の色が変わっても、瞳の色が変わっても、君は美しいな」
忘れかけていた優しい声に、モヤがかったようだった脳がスッキリとしていく。
私に触れながらジュウド様が何かを言おうとした時、またごぼっと血を吐いた。
ジュウドの血で床が染まり、ジェシカは自我を取り戻した。
「ジュウド様、しゃべらないでください。これを飲んでください」
私はエリクサーの小瓶をジュウド様の口に押し当てた。しかしジュウド様の喉は嚥下をしてくれない。息も弱々しくなっていく。ジェシカはエリクサーを口に含むと、ジュウド様の唇をふさいだ。ゆっくりと自分の口内にあったエリクサーをジュウド様の口へと移していく。するとジュウド様の喉がごくりと嚥下を始めた。
ジュウド様がエリクサーを飲み干すと、すぐに変化が現れた。今まで弱く不規則だった呼吸は規則正しく整い、顔色は未だに悪いが、傷は塞がった。
「ジュウド様……良かった」
「ジェシカ、ありがとう。助かったよ」
「ジュウド様、良かった……っ……本当に良かった」
私はそう言いながら涙を流した。
良かった。
本当に良かった。
そんな私たちを見ながら、ゾイド陛下がよろよろと立ち上がった。
「ジュウド何をしている。魔王の首を取れ。その首を私の元に持ってこい」
声を荒げるゾイドをジェシカは睨みつけた。すると「ヒッ」と声を上げてゾイド陛下が震え上がる。一部始終を静観していたネクスト王太子殿下がゾイド陛下に駆け寄った。
「陛下……いえ、父上もうやめて下さい。これ以上ジェシカ嬢を刺激しないでください。民を想うのならこれ以上、ジェシカ嬢を怒らせてはいけません」
「うるさい!黙れ!ネクスト、貴様には見えていないのか?あのおぞましい姿が!世界の平和のために、魔王は存在してはならないのだ」
ゾイド陛下の言葉に反応したのはジュウド様だった。
「陛下、ジェシカは聖女です」
「まだ言うか。そやつのどこが聖女だというのだ。魔王の斑紋がくっきりと浮かび上がっているではないか!」