「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「ジュウド様、来世では普通の人間として出会いたいですね。私は普通の村娘でジュウド様に恋をして結婚して、子供も産んでみたいです。普通の幸せを体験したいです」
「ジェシカやめろ。どうしてそんなことを言うんだ。これから幸せになればいい」
私はジュウド様の言葉に、首を左右に振った。
それは無理だと、私は無言で否定した。
「ジュウド様、剣を持ってください」
「無理だ……ジェシカ。俺には無理だ」
「出来ますよ。あなたは勇者です。私の命を絶つことの出来る唯一の存在」
短剣を持とうとしないジュウド様にジェシカは語気を荒げた。
「あなたは勇者なのです。やりなさい!私は魔王、あなたに仇なすもの。それを討つのが勇者の務めです」
それでも動こうとしないジュウド様を見て、私は魔法を使った。するとジュウド様の体は自分の意思とは関係なく勝手に動き出す。
「何だこれは……ジェシカ、君がやっているのか?やめろ……やめてくれ!」
ジュウド様はそう叫ぶが、私はやめるつもりはない。
「ジュウド様、今までありがとうございました。ジュウド様に出会ってから幸せなことばかりでした。私に愛を教えてくれたあなたが大好きです」
私に愛をくれた人。
私に愛を教えてくれた人。
私を愛してくれた人。
「ジュウド様、大丈夫です。私たちはまた巡り合えます。またあの森で待っています。だから会いに来てくださいね」
私の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
私は短剣を握り締め、その上にジュウド様の手を乗せた。
ここはゆっくりと刃を入れるより、一気にいった方がいい。
私は息を吸い込むと、腕に力を込め胸に短剣を突き刺した。鈍い感覚が手に伝わり、口から生暖かい鮮血を吐き出した。
「うあぁぁぁぁーーーー!!ジェシカ、ジェシカ、ジェシカ、どうしてだ」
私の手の上に乗せられたジュウド様の手が震えている。
「ふふふっ。ジュウド様大丈夫です。また会いましょう」
涙を流しながら私の名前を呼ぶジュウド様の顔がぼやけていく。
最後に視界に映るのがジュウド様で良かった。
「愛しています……」
そこで私の意識は途切れた。