「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
毎日忙しく働くうちにジェシカへの想いは少しずつ思い出に変えられると思っていたが、それは無理なことだった。執務机に広がる資料から視線を逸らし、俺は両手を握ったり開いたりを繰り返しながら、ジェシカの笑顔を思い出す。まるでジェシカが近くにいるような感覚さえ覚える。
「ジェシカ、君に会いたいよ」
俺はボソリと、そう呟いた。
その時……。
「だったらどうして会いに来てくれなかったのですか?」
俺は自分の手を見ながらフッと笑った。
「ジェシカの声が……幻聴が聞こえる」
「幻聴ではないですよ」
俺は弾かれたように前に視線を向けた。
そこに立っていたのは……。
「ジェ、ジェシー!!」
いや違う。
銀の髪に澄んだ空色の瞳、小さな体だが君は……。
「ジェシカ!!」
俺は大きな音を立てて立ち上がると、ジェシカに向かって両手を広がた。するとジェシカが嬉しそうに駆け寄り俺の腕の中に納まった。
奇跡が起きたのか?
俺の腕の中にジェシカがいる。
俺はジェシカのぬくもりを確かめるように、その小さな体をぎゅっと強く抱きしめ唇をふさいだ。すると淡い光でジェシカの体が包まれた。光に包まれたジェシカの体はみるみるうちに成長していった。
俺はジェシカから唇を離すとその姿に目を潤ませた。