「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「ジェシカ、もう会えないものと思っていた」
「ふふふっ、だから言ったでしょう。森で待っているから会いに来てくださいって、言ったじゃないですか」
「いや、確かにそう言っていたが、そういう意味だとは思わず……。君のいない森に行く気にはならなかったんだ」
「そうだと思いました。だから私から来ちゃいましたよ」
にこにこと笑いながら、ジェシカはあの日あったことを話してくれた。
「ジュウド様が私の胸に短剣を刺した時のことは覚えていますか?」
「ああ、今でも夢に見るし、手の感触は未だに残っている」
それを聞いたジェシカが複雑そうな顔をした。
「苦しめてしまいましたね」
そう言って、しゅんとするジェシカの肩を抱き寄せながら話の先を促した。
「ジュウド様はあの時、私が握る短剣の上にジュウド様の手を乗せました」
「確かにそうだった」
「魔王は自分で自分の命を絶つことは出来ない。自殺は出来ない、ということをジュウド様は知っていますか?」
「ああ……まさか……」
「私もあの時は賭けだったんです。短剣を握っているのは自分だから自殺になるのか、それともジュウド様も短剣を私の手の上からといえど握っているため、それが魔王の命を絶つ行為となるのか」
「なるほど、その賭けにジェシカは勝ったということか」
「はい。ダメかも……という思いはありましたが、うまくいって良かったです。それでも心臓に短剣を刺し心臓を止めたことで、心臓の再生にかなり時間がかかってしまって、目覚めたのは最近なんです。エリクサーのポーションが使えたら良かったのですが、全てルノア様に渡してしまっていたので使用できなくて……」
「そうだったのか。うまくいって良かった」
「それでも魔力が完全に戻らず、子供の姿でしたが……その……ジュウド様に魔力を分けて頂いたので、元の姿に戻れました」
ん?
いつの間に俺は魔力を分けたんだ?
もしかして……先ほどのキスか?
真っ赤になっているジェシカを見るに当たりなのだろう。
それにしても本当に良かったと思う。
俺たちが感動の再会を果たしていると、部屋にノック音が響き返事もしていないのに扉が開いた。
「団長!大丈夫っすか!」