「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 俺の部屋から大きな音がしたためか、血相を変えたレンとルノアが入って来た。二人は部屋に入るなり大きく目を見開いて固まった。そして震える唇を開いたのはレンだった。

「団長と……ジェシカ……様……」

 レンはそう言うと、その場に崩れるように座り、ぼろぼろと涙を流した。その隣ではルノアが眼鏡をクイッと上げながら口角を上げている。

「ジェシカ様、ご無事だったのですね。……団長の部屋の様子がおかしいと報告を受けて急いできましたが、こんな奇跡が起きていたなんて……」

「ルノア様、レン様、ご心配おかけしました」

「いいえ。あなたが無事でよかった」

 ルノアはそう言いながら目頭を押さえた。

「申し訳ありません。こんな姿を見せてしまい……っ……。今日までの団長は見ていられないほどだったので、あなたが生きていてくれて、無事で本当によかった」

 ルノアが涙ぐみながらそう言った。

 その隣で泣き続けるレンは、鼻水まで垂らしながらジェシカを見ていた。

「団長は何かに取り付かれたみたいに仕事をこなしていて、俺……怖かったっすよ。それなのに壊れたおもちゃみたいに急に動かなくなるときがあって、見ていられなかったっす」

 ジェシカはあの日、俺を守るために城へと転移した。突然レンとルノアの前からジェシカが姿を消し、何も出来ずに悲劇的な最期を迎えたことをずっと悔やみ、悲しんでいた。自分たちは何も出来なかったと自分たちを責めていた。ジェシカが消えたのは俺を守るためだったが、レンとルノアは自分達のせいだと言い続けていた。

 そんな中でレンはもしかしたらジェシカは生きているのでは?とよく言っていた。ジェシカの魔力があれば何となるのでは無いか?森に探しに行こうと、何度も言われていた。それを俺はずっと拒否していた。もっとレンの意見を聞いておけば良かったと思うが、それも後の祭りだな。


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