「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 ジェシカが無事でよかったとレンが泣く中で、俺は先ほどジェシカから聞いた話をレンと、ルノアに話した。

「そうでしたか。そのようなことが……それなら……団長、私は今からネクスト陛下の元に向かいます」

 ルノアが何を考えているのか分からないが、ルノアが何かをひらめいたのなら任せておいて大丈夫だろう。


 それから数日後、城下町では聖女に関するある噂が広まり始めていた。

「聞いたかい。聖女様の噂」

「ああ、今その噂でもちきりさ」

 噂を知らない町人はキョトンとし、噂を知っている人間は興奮したように話を盛って話し出す。

「何でもあの悲劇の聖女が生きていたんだとよ。心臓を一突きされた聖女様は聖域で眠り続けていたらしい。それを勇者様が愛の力で目覚めさせて救い出したとか」

 だいぶ盛られているが、勇者と聖女の話は子供の絵本や、女性たちの好きなラブロマンス的な小説や観劇として発表され、その話はあっという間に広がっていった。

 何といっても女性は恋や愛の話が大好きである。ジェシカの生い立ちをドラマチックに脚色した舞台では、皆が顔をしかめ、頬を赤くさせ、涙を浮かべ、最後には感動していた。

 こっそり観劇を見に行った俺たちは、最後には見ていることが出来ずに二人して顔を赤面させた。

「ジュウド様、これはやり過ぎなのではないでしょうか。かなり美化され過ぎていると思います」

「俺もそう思うが、俺たちが幸せに暮らすためだ。我慢してくれ」

 そう、これはルノアとネクスト陛下が考えたことだった。

 魔王の斑紋の誤認識を正すためにはどうすればよいのかと考えた末、人々に広まりやすい観劇での上演と、子供たち向けの冒険物語として勇者と聖女が登場する物語を作った。

 魔王の斑紋は聖女の聖痕なのだと人々に広げる為だったが、それは大成功だった。


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