「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 *

 そのころ王城にもジェシカが濁流に飲まれたと報告が上がった。

「何だと!それは本当なのか!」

 そう声を荒げたのはこの国、ファレスタの王、ゾイド・レア・ファレスタだった。その隣には顔を青ざめさせながら口元を押さえる王妃ニーナ・ルア・ファレスタの姿もあった。二人の前で頭を垂れるのは早馬の伝令を任された騎兵の若者だった。息を切らせて我が玉座の前にやって来たこの青年も顔を青くし、今にも倒れそうな様子で俯いていた。その様子から先ほどの伝令が真実だと物語っていた。

「誠なのだな……」

 ゾイド王は頭を抱えながら、玉座の背にもたれかかった。どうしたらよいのか即座に頭の中を整理する。国のトップに立つ者として威厳を保ち指揮を執らなければならない。ゾイド王は威風堂々と立ち上がり、重鎮達に命令した。

「すぐにジェシカ嬢の捜索を開始しろ。川に沿って森全てを隈無(くまな)く探せ。見つけ次第王城に連れてくるのだ」

 王の言葉を聞き、重鎮達が動き出す。

 それから国を挙げての捜索活動が始まったが、ジェシカを見つけ出すことは出来なかった。


 そうしてあっという間に数週間が過ぎていた。

「何故だ!なぜ見つからぬ!いったい何をやっているのだ!」

 王城の広間にゾイド王の声が響き渡る。

 ジェシカが行方不明になってから、ゾイド王は苛立ちを隠そうともせず、騎士団長に罵声を浴びせていた。捜索を一任されていた騎士団長は、ゾイド王の罵声に耐えながら膝をつき騎士の礼をとっていた。

「申し訳ありません。派遣された騎士達は寝る間も惜しんで捜索を続けています。しかしジェシカ様の足取りはつかめず、跡形もなく消えてしまったかのようで……」

「そんなわけがなかろう!『魔王の斑紋』を持つものだとしても、たかが10歳の娘だぞ。さっさと見つけ出せ!」

「はっ!」

 騎士団長は、深く礼をとると立ち上がり、広間から出て行った。

「役に立たん奴らだ」

 吐き捨てるようにゾイド王が言い放った。


 
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